シェブロン・フィリップス・ケミカルがリアルタイムプロセスデータの需要に対応 ~エンジニアリング、運用、保守など、データハイウェイを介したデータの理解度向上を求めるニーズが増加~

事例紹介:シェブロン・フィリップス・ケミカルがリアルタイムプロセスデータの需要に対応

出典: https://www.matrikonopc.com/downloads/1476/casestudies/index.aspx
By Kevin Parker

シェブロン・フィリップス・ケミカル社では、エンジニアとビジネスアナリストから時系列データに対するニーズが急増しました。これを受け、同社のITおよび管理部門では、企業内でのリアルタイムプロセスデータへのアクセスと共有に関する課題への取り組みがスタートしました。

テキサス州ザ・ウッドランズに本社を置くシェブロン・フィリップス・ケミカルは、シェブロン・コーポレーションとフィリップス66が共同で所有する石油化学会社です。同社は、世界中に31の生産・研究拠点を持っています。

Hermesと名付けられたプロジェクトでは、「プロセスネットワーク」「ビジネスネットワーク」および同社の「Microsoft Azureクラウドコンピューティングプラットフォーム」を介した、データ共有を容易にするデータハイウェイの展開へとつながりました。データハイウェイは、すでに8つのシェブロン・フィリップスの拠点に実装されています。

シェブロン・フィリップスのデータエンジニアであるザッカリー・カスパー氏によると、「私たちがプロジェクトに名付けたHermesは、ギリシャの神で、天の球から地球の人々にメッセージを届けた存在です。情報が私たちのクラウド環境を通じて共有されている点を除いて、今私たちが行っていることと共通しています」。

多くの企業(特に、ジョイントベンチャーなどの合弁会社など)と同様、シェブロン・フィリップス社の自動化システムにはさまざまな運用環境、異なる分散制御システム(DCS)、データ履歴、SCADAツールセットが混在しています。過去の経験から情報共有は非常に困難であると認識され、拠点レベル以上では情報共有がほとんど行われていませんでした。情報共有が行われたとしても、主にMicrosoft Excelと電子メールによる共有が大半でした。

分析の必要性

全社的な情報共有の動きの始まりは、シアトルを拠点とするSeeq社のソフトウェアアプリケーションを、2020年にシェブロン・フィリップスが使用したのがきっかけでした。このソリューションは、データの理解と活用を目指すプロセス製造企業向けのもので、カスパー氏によると、Seeqは企業全体のシステムに簡単に接続することができます。こうした機能が備わったことで、シェブロン・フィリップスの各拠点では、ダッシュボードを構築し、ツールとして分析結果の活用を始めました。

開始して見ると、社内には、リアルタイムの生産プロセスをよりよく理解または最適化しようとする人々をサポートするデータへのニーズがあることがわかりしました。初期のユースケースの一例として、環境と持続可能性の報告の自動化、および改善された予測・予防保全があります。

「私たちは、分析プラットフォーム内だけでなく、私たち自身のクラウド環境全体でデータを共有するための、より良い方法を探していました。Azureは、一元的にアクセスできる環境であると分かっていましたが、ネットワーク全体でデータを迅速かつ安全に移動させるメカニズムが必要でした。それがMatrikon Data Brokerを使用することで実現したのです。」とカスパー氏は述べています。

Matrikon Data Broker(MDB)は、OTデータを全社で利用可能にし、新しいデータソースを迅速に採用します。カナダ・エドモントンに拠点を置くMatrikonは、ベンダーに依存しない、制御自動化データの共有のためのOPC UAおよびOPCベースのデータ相互運用性ソリューションを提供しているサプライヤーです。

シェブロン・フィリップス・ケミカルが使用するMatrikonの他のツールには、OPC UAトンネラー(UAT)が含まれています。OPC UAクライアントおよびサーバーをOPC Classicコンポーネントとシームレスに統合することで、OPC UAの採用を段階的に進めることができます。また、UATは、OPC Classicコンポーネント間のDCOMの使用を排除することで、通信をより安全で信頼性の高いものにします。

カスパー氏によれば、「(Matrikon Data Brokerを使用してOTのリアルタイムプロセスデータへ世界の各拠点からアクセスできるようにするという)今回の取り組みは、全世界の拠点において、時系列データを持つすべてのシステムを対象にしています。昨年のサンクスギビングまでに8拠点での対応が完了しました。初めは実装にフォーカスしていましたが、今ではデータの活用が始まっており、6月までには世界中で実装が完了予定です。」

標準仕様と解決策

よく知られているように、OPC(Open Platform Communications)は、産業通信のための一連の規格と仕様で、産業自動化タスクフォースが1996年に初版の標準規格を開発しました。21世紀に入り、世界中のインダストリー分野の企業でDXが進展するにつれ、OPC Foundationは、センサーからクラウドアプリケーションへのデータ交換用クロスプラットフォームでオープンソースのIEC標準、 IEC 62541 OPC Unified Architectureを開発しました。OPC UAの最初のバージョンは2006年にリリースされました。最新バージョンのOPC UAでは、クライアント/サーバー通信に加えてパブリッシュ/サブスクライブが追加されています。

カスパー氏によれば、「私たちが接続するほとんどのツールは、まだOPC Classicで通信しています。Hermesプロジェクトを進めるためには、データを安全に動かし、全体のフットプリントを管理できることを証明しなければなりませんでした。各ノードにはアプリケーションがあります。最大の利点は、現場からクラウドへ時系列データを送るため、規格に準拠したツールセットを持っていることです。MQTTは、OPC UAを変換してAzure環境で使用できるようになります。」

「OPC UAに対する私たちの信頼を高めたのは、パートナーのMatrikonでした。OPC UAを使用して標準化を進める私達に対し、Matrikonは、私たちが直面する課題を解決するために必要な専門知識を示してくれました。」。

シェブロン・フィリップス内でデータを活用する人々には、リアルタイムデータにアクセスして共有するニーズがあるほか、データにコンテキストを追加する必要があります。インダストリー全体では、ほとんどのインテグレーション構想は狭い範囲で考えられています。OTデータレイヤーを上手く統合できるかどうかは、サードパーティのデータソースの統合、および情報モデリングとマッピングにより実現するコンテキストの保存や拡張にかかっています。OPC規格とMatrikonの技術では、このような進歩のサポートが可能です。

OPC UAでは、OPC UAコンポーネント間でデータモデルを作成および検出するためのオープン標準の方法を定義しています。この実現にあたり、1つのUAコンポーネントが他の第3者のUAコンポーネントからデータを「取り込む」ために追加のコードを書く必要はありません。Matrikon Data Brokerにより、エンドユーザーはデータモデリング(UAコンパニオン仕様を介する)およびOTデータソースマッピングが可能になります。これにより、ユーザーはさまざまなデータ(Modbusベースのユニットを含むコンテキストのない古いコンポーネント、ベンダー固有のプロプライエタリなデータ形式、新しいUAコンポーネントなど)の存在するOTデータから、意味のあるデータビューの作成が可能になります。

このように、カスタマイズされたデータビューは、オンプレミスおよびクラウドアプリケーション(ダッシュボード、分析、レポート生成など)の有意義なOTデータインプットとしての役割を担います。特に、段階的にデータ統合を進めているプロジェクトでは重要で、古いコンポーネントがモダンアプリケーションで必須のデータコンテキストを持っていない場合などに不可欠です。

実装における不測の事態

さまざまな拠点で行われる標準技術の実装を管理するために、まずシェブロン・フィリップスでは、各拠点で対応するための実装テンプレートを作成しました。

カスパー氏によると、「アイデアの背景はとてもシンプルでした。Data Brokerとコンポーネントをインストールしなければならないこと、および特定の数のネットワークにインストールしなければならないことは理解していました。変動要因は、各拠点が何を生産しているかという点にありました。また、たとえばPI Historianの1つのインスタンスに統合しても、次のPIのインスタンスがミラーイメージであるとは限りません。しかし、実装の計画や作業プロセスに関して言えば、反復による実施が可能で、一度に複数拠点に実装することができました。結果的に、12週間未満で8つの拠点への実装が完了しました」。

「現在は、ストレステストとロードテストをメインに対応しています。リアルタイムデータへのニーズは、目先の「いま」だけでなく、今後5年から10年にわたって満たす必要があるものです。また、システムの安定性も優先的に対応しています。構築されたものを監視するためのプロセスが必要で、壊れる可能性がある場所と時期を特定するのにプロセス内の分析が必要です」とカスパー氏は述べています。

最後に、カスパー氏は情報技術と運用技術(IT/OT)の収束が生産環境の将来を決めると指摘しています。ITの専門家とOTの専門家は、まだ協業方法を模索する段階にあります。時には、2つのグループの異なる考え方が最大の課題となりますが、適切な技術があれば共通の土壌を作るのに役立ちます。

「ITの人々は、新しい価値を生み出すためにIT活用の先端技術に焦点を当てたいと考えています。一方、データが生成される現場のOTの考え方は、システムの安定性に焦点を当てています。それが最大の課題です。必要なのは両者をつなぐ橋です。そこでMatrikon Data Brokerが役立ちました。Matrikonは、Matrikon Data Brokerを"データテクノロジー"またはDTと呼び、新しいカテゴリのソフトウェアを定義しました。データテクノロジーでは、見えないところでIT/OTの対立関係やギャップを解消しながら、全社的にOTデータを共有したいというニーズに対処していきます。今後向かうべき正しい方向に向かう第一歩だと考えています。」

採用製品:
MatrikonⓇ Data Broker