
安価なマイコンで高信頼性は実現できるのか。TOPPERS SafeG-Mという答え
はじめに
生産ラインのセンサー、工作機械のアクチュエータ、鉄道や車のECU。私たちの社会インフラは、無数の小さなマイクロコントローラー(マイコン)によって支えられています。
かつてこれらのOperational Technology(OT)機器は、閉じたネットワークの中で静かに動いていましたが、OTはITとつながり、今では収集したデータをAIによる予知保全などに活用しています。便利になった一方、これらのマイコンはサイバー攻撃の標的とされるようにもなりました。EUのCRA(サイバーレジリエンス法)、IEC 62443、そして日本のJC-STARなど、機器レベルでのセキュリティ対策を義務付ける規制が世界中で強化されているのは、この危機感の表れです。
とはいえ、悩ましい現実もあります。OT/IoT機器に使われるマイコンは、スマートフォンのアプリケーションプロセッサーのような、潤沢な計算資源を持っていません。
「セキュリティを強化するか、コストを守るか」 — この二者択一が、多くの開発現場の課題となっています。
低コストマイコンでも信頼性を諦めなくていい
この二択に終止符を打つ鍵となるのが、Armがマイコン向けに提供するハードウェアの分離機能(TrustZone拡張)です。これは、1つのプロセッサーの中に「信頼できる領域」と「通常の領域」を物理的に分離し、低スペックのマイコンでも暗号鍵や重要な処理を安全に保護できる仕組みを備えたセキュリティ技術です。
ただし、この分離機能はあくまで「土台」にすぎません。実際に信頼できるセキュアOSと、品質保証の主体が存在しないOSS(FreeRTOSなどのRTOSや膨大なミドルウェア)を同じ安価なチップ上で共存させるには、その上で動く「仕組み」が必要になります。ここで力を発揮するのが、TOPPERSプロジェクトが提供するデュアルOSモニター「TOPPERS SafeG-M」です。
TOPPERS SafeG-Mが実現すること:低コストのまま、高信頼性を手に入れる
TOPPERS SafeG-Mの最大の価値は、追加コストをかけずに、既存の安価なマイコン1チップの上で高い信頼性を実現できることにあります。
TOPPERS SafeG-Mを設計する上で重視したのは、品質保証が難しいOSSや通常アプリケーション側の実行状況に関係なく、信頼できるセキュアOS側の処理が遅延なく最優先で動作することです。万一OSS側に不具合や乗っ取りが発生しても、セキュアOS側の処理系(TOPPERS/ASP3)は影響を受けず動き続けます。
つまり、高価なハイエンドマイコンを新たに採用したり、システムを別チップに分けたりしなくても、今使っているマイコンのままでセキュリティレベルを引き上げられるのです。これは、コスト制約の厳しいOT/IoT機器の開発現場にとって大きな意味を持ちます。
ホワイトペーパーで詳しく解説していること
以下のような実装レベルの詳細は、ホワイトペーパー「TOPPERS SafeG-MとOT/IoT機器に求められるサイバー攻撃防御機能」で解説しています。
- ハードウェアによるメモリー分離の仕組み(セキュア領域とノンセキュア領域の設定方法)
- スタックオーバーフローやコンテキスト改ざんをハードウェアでどう検出するのか(スタックリミットチェック、スタックシーリング、完全性署名)
- セキュア側とノンセキュア側のプログラムを安全に連携させる仕組み(C言語での実装例つき)
- 割込みの優先度をどう設計すればセキュアOS側の処理がブロックされないのか
低コストと高信頼性を両立させたいマイコン開発者や組込みエンジニアの方は、ぜひ全文をご覧ください。
TOPPERS SafeG-MとOT/IoT機器に求められるサイバー攻撃防御機能
よくある質問
Q. なぜ既存の安価なマイコンのままでセキュリティを強化できるのですか?
Armのマイコン向けセキュリティ拡張機能を土台に、TOPPERS SafeG-Mがセキュアな処理と通常のOSS処理を1つのチップの中で安全に分離・共存させるためです。専用のセキュリティチップや高性能プロセッサーへの置き換えが不要になります。
Q. TOPPERS SafeG-Mはどんな現場に向いていますか?
品質証明が難しいOSSやサードパーティ製ソフトウェアを、信頼性の高いセキュアOSと同じ安価なチップ上で安全に共存させたい場合や、CRA・IEC 62443・JC-STARなどのサイバーセキュリティ規制への対応を、コストをかけずに検討したい組込み開発の現場に適しています。TOPPERSをベースにした商用の高信頼RTOSとして、製品ページで詳しい情報をご覧いただけます。
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2026.06.23






