今から学ぶOPC UA① ―スマートファクトリーにおけるOPC UAの位置づけ―

本コラムでは、OPC UAの概要から具体的な活用方法までを複数回にわたり解説していきます。

第1回目の今回は、「スマートファクトリーにおけるOPC UAの位置づけ」としてOPC UAを取り巻く市場背景についてご説明します。


概要

昨今、「インダストリー 4.0」や「Society 5.0」という用語が広く使われていますが、それを理由づける背景があります。過去に起こった産業革命を見てみると、インダストリー4.0のビジョンで描かれる、相互接続したコンポーネントとシステムで構成される「未来の工場」が果たす役割の重要性が見えてきます。今回のトピックスでは、インダストリー 4.0 という用語の背景を振り返りながら、OPC Unified Architecture (以下OPC UA) の動作概要や双方がどのように関わってくるかを紐解いていきます。また、OPC UAはインダストリー 4.0を構成する先進的かつ複雑な技術ですが、この技術を活用するにはどのような課題解決が必要かについても解説します。

インダストリー4.0の重要性

メーカーとユーザーのどちらに聞いても、インダストリー 4.0という用語やインダストリー 4.0が描く未来は、FA業界に活気を与える影響のあるものと捉えられています。インダストリー 4.0では、「スマートファクトリー」「スマートマシーン」「ネットワーク化されたプロセス」を含む、システムが生み出す新たな変革による第四次産業革命を想定しています。

第一次産業革命では、水蒸気を使った生産の機械化が見られました。 第二次産業革命では、電力を利用した大量生産が導入されます。第三次の革命はデジタル化で、エレクトロニクスと IT を使用した生産の自動化が進みました。インターネットによって現実世界と仮想世界の距離が縮まったことで、IoT=モノのインターネットが形作られてきました。

将来の工業生産は、フレキシブルな生産による製品の強力な個別化、ビジネスおよび付加価値プロセスにおける顧客とビジネスパートナーの広範囲における統合、生産と高品質サービスの融合などが進んでいくと予想されています。相互接続性の恩恵を受けた未来の工場では、すべてのコンポーネントが生産プロセスを自律的に制御することが可能になります。各コンポーネントが人、機械、機器、システムのどれであっても、すべてが相互接続され、情報を収集・共有するように設定されていきます。そのため、未来のコンポーネントは、サービスが必要な時に自動的に通信を行うようになります。

インダストリー 4.0または「統合産業」の概念をうまく実現するためには、まず克服しなければならない課題がいくつかあります。インダストリー分野は最新の産業革命を率いる立場にありますが、その要となるのが相互接続性です。相互接続性を確保するための、基本となるコンポーネントがOPC UAです。OPC UAは、機械から別の機械、機械から企業など、あらゆるレベルでの相互運用性を可能にする標準規格です。

OPC UAと組込み機器

OPC(オープンコネクティビティ)は、FA分野では世界で最も広く使用されている標準データ交換規格です。組織全体のさまざまなデバイス、制御システム、およびアプリケーションから共通形式でデータを収集し、転送します。プロセスデータの構造化と抽象化を行うというシンプルなアプローチにより、産業市場では主要な通信規格として使われており、ほぼすべての産業データがOPCのデータ構造にマッピング可能です。

OPCの進化形であるOPC UA は、プラットフォームに依存しないプロトコルと組み込みのセキュリティメカニズムを備えたサービス指向アーキテクチャ (SOA) を活用したものです。あらゆる環境で記述できるOPC UAアプリケーションは、マイコンレベルからエンタープライズサーバーまで、スケーラブルに実行可能です。

OPC UAの使用はPCレベルに限定されません。柔軟性を特長とするOPC UAは、LinuxなどのWindows以外のプラットフォーム、RTOS(リアルタイムオペレーティングシステム)上で動作する組込みシステム、さらにはOSを使用しない「ベアメタル」環境向けにもアプリケーション開発が可能です。
特に、ビジネスの分析に不可欠なデータは、現場に近い低レベルにある多数のセンサーや機器から生成されるので、組み込みレベルでのOPC UAアプリケーションが重要となります。

インダストリー4.0の黎明期、また今日のオートメーションシステムにおいても、プロセスや設備をよりよく理解し収益性を最大化するためも、ユーザーはプロセスや設備の動作をリアルタイムで表示する必要があります。そのためには、デバイスを他のデバイスやアプリケーションに接続し、生成されたデータを転送するよう構成する必要があります。この構成作業は複雑であり、多くの導入環境では、ユーザーが扱える限られた量のデータしか転送されていません。OPCサーバーを直接デバイスに組み込むことで、どのようなアプリケーションでもそれぞれに最適なソリューション構築することができ、あらゆる産業用デバイス同士を接続可能です。これにより、システムは効率化され、コスト、運用面で明確なメリットがユーザーに生まれます。今日、OPC UAは、エンタープライズレベルからオートメーションコンポーネントの組み込みシステムをつなげる役割を担っています。

インダストリー4.0におけるOPC UAの役割

OPC DA(OPCクラシック)は、データ接続で広範に使用されているソリューションですが、その後継規格としてより安全かつ信頼性の高いデータ交換方法を確立したOPC UAは、インダストリー4.0の実現に向けた、世界で最もオープンな通信規格です。

OPC UAは、プラットフォーム非依存に設計されており、セキュリティ性・拡張性・柔軟性を兼ね備えていることから「時間耐久性」がある規格といえ、結果としてインダストリー4.0の要件を満たしています。さらに、未来の工場の永続的なデータ交換における「目に見えない」コンポーネントの統合を容易にし、IoT時代において重要な役割を担っています。

デバイス、センサー、コントローラーに組込み用OPC UAテクノロジーを導入することで、これらのデバイス間でオープンな接続が可能になり、各企業にとって明確なメリットが生まれます。OPC UAを通じて得られるデータは、エンドユーザーのより迅速な意思決定を可能とし、統合されたエンタープライズアーキテクチャが現実のものとなります。この統合産業の概念は、インダストリー4.0の軸となっています。

OPCクラシックは、OPC UAの前身として、管理層と制御システム層のギャップや管理層・制御システム層と企業の他部門との間の障壁を取り除く「オープンデータ接続革命」を起こしました。現在、OPC UAは、そのプラットフォームとOSの独立性および柔軟なデータモデリング機能により、OPCクラシックの概念を受け継ぎながらさらに拡張を続けています。OPC UAの持つ独立性および機能は、データコンテキストを保持した最適な形式でユーザーにデータを提示しつつも、事実上すべてのデータソースからのデータを他方でネイティブに表現します。このように、一貫したOPC UAデータモデルによってデータ構造を忠実に表現することで、物理層デバイスを効果的に抽象化します。

結論

インダストリー4.0への移行を行うことで、材料・商品・情報流通の制御、意思決定の迅速化、報告の簡素化などのメリットが期待できます。部材のスマート化を行えば、部材自らが機器に対しどのように処理する必要があるかを知らせます。スマート工場を構成するコンポーネントは、メンテナンスや修理を直接開始し着手できるようになります。これまで柔軟性の低かった生産ラインは、モジュール式の効率的なシステムへと変わっていきます。最終的には、製品のライフサイクル全体を完全に文書化することも可能でしょう。インダストリー4.0が完全に機能した状態とは、現段階では未来的な概念かもしれません。しかし、すでに進歩は始まっており、徐々に全エンタープライズレベルで包括的変革や大きな変化へとつながっていくでしょう。OPC UAは、インダストリー4.0の実現と成功に不可欠であり、組織のすべてのレベルでのデータ交換を可能にする役割が期待されています。

出典

Matrikon "Industry 4.0 The Role of OPC UA in a Smart Factory"
https://www.matrikonopc.com/portal/downloads/whitepapers/MOPC_Industry-4-0_Whitepaper_EN.pdf
(PDFの表示、ダウンロードにはRegisterが必要です)


次回のコラムでは、OPC UAの特長など、規格の概要について解説していきます。


Matrikon® FLEX™ OPC UA SDK

Matrikon社は、OPC UA組込みサーバーソフトウェア開発キット(FLEX OPC UA SDK)の開発を通じ、規格に準拠した高性能なOPC UAサーバーの機器への直接搭載と、機器へのスマートな通信機能の構築を容易に実現しています。FLEX OPC UA SDKは、さまざまな種類の機器で使用できるように設計された、拡張性の高さを特長とする組込み用OPC UAソリューションです。

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