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2009年10月13日
株式会社ユビキタス

株式会社ルネサス テクノロジ
ユビキタス社、ルネサスと車載ネットワーク向け高速TCP/IP通信の開発で協業~通信処理の分離により600Mbpsを超える安定した高速通信を実現~
株式会社ユビキタス(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:川内 雅彦、以下 ユビキタス社)、株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区、取締役会長:塚本克博、以下ルネサス)の2社は、このたび車載ネットワーク向けの高速TCP/IP(注1)通信の開発で協業し、600Mbpsを超える高速通信の実証に成功しました。
今回、ユビキタス社の組込み機器向け高速TCP/IP プロトコルスタック「UbiquitousTCP/IP」を、ルネサスの次世代車載情報端末向けデュアルコアSoC「SH7776」(SH-Navi3)のうちの1つのコアに実装しました。車載組込みCPUとしては世界で初めて最高クラスの通信速度を安定的に実現し、車載情報端末でのTCP/IP通信の実用化にめどをつけました。サーバ、インターネット、ネットワークシステム処理で必要な世界最高速クラスのブロードバンド環境の構築が、カーナビゲーションシステム向けとして可能となり、UWB(注2)やWAVE(注3)をはじめとした超高速無線通信の実現に大きく貢献できます。具体的には、リアシートエンターテイメントにおいて、ハイビジョンクラスの映像の複数同時視聴、車外に複数取り付けた高精細なカメラ画像の同時伝送による360°表示、車内に持ち込んだポータブルAV機器とカーナビゲーションシステム連携など、新たな車内情報環境の構築が可能となります。
2社は今後、車載機器メーカーへ高速通信機能の搭載を提案していきます。
今回使用したルネサスのSH7776は最大動作周波数533MHzで動作可能なSH-4Aコアを2つ搭載するデュアルコアSoCで、1つのコアでナビゲーションや動画再生のアプリケーションを動かしながら、もう1つのコアでネットワーク通信処理を専用に行うことが可能で す。ユビキタス社が提唱するNOE(注4)アーキテクチャをこのデュアルコアSoCに応用することで、アプリケーションと通信処理のお互いのパフォーマンスへの影響を排除し、高速な通信性能を実現できます。今回、1つのコアにユビキタス社のUbiquitousTCP/IPを実装し、PCI-express(注5)インタフェースを介してLinuxOS搭載PCとの間でFTP(注6)によるデータ転送を行ったところ、送信670Mbps, 受信615Mbpsの高速転送が達成されました。
近年、車載情報端末の高機能化が進むとともに、リアシートエンターテインメントやバックビューカメラのような車内の高速映像伝送や、車外のITS(注7)情報サービスとの連携のニーズが高まっており、インターネットとの親和性の高いTCP/IP通信が車載ネットワークでも使われるようになっています。一方、TCP/IPは一般的に組込み機器にとってCPU負荷が高い処理であり、多チャンネルの映像伝送のような高速通信を行うとナビゲーションのような他のアプリケーションソフトウェアの動作が遅くなる場合や、通信速度が十分出ないような問題が発生する場合が多々あります。 本開発成果はこれらの問題を解決するものです。
2社は今後、ルネサスが持つUWBのような車載向け無線通信技術と組み合わせたシステム化により車内ハーネスの置き換えソリューションとしても検討し、共同で車載ネットワークソリューションを車載機器メーカーへ提案していきます。
■ ユビキタス社 代表取締役社長 川内雅彦は次のようにコメントしています。
「ルネサスのSH-Navi3のデュアルコアCPUの一つを、ユビキタス社が提唱するNOEとして使用することにより、高速通信にも対応した車載情報センタ端末に広く応用されていくことを期待しています。」
■ ルネサスのマイコン統括本部 自動車事業部 副事業部長 山内直樹は次のようにコメントしています。
「ユビキタス社のTCP/IPスタックは家電やゲーム機において広い採用実績がある非常にコンパクトなソフトウェアのため、TCP/IP通信の高速化に大きく貢献し、SH-Navi3の高性能CPUの処理能力を余すところなく引き出してくれました。今回車内のUWBなど による自動車向け超高速無線通信への応用にめどが立ったことを非常に嬉しく思います。」
■ ルネサスの SH7776 について
ルネサスのSH7776は「次世代車載情報センタ」に必要な性能・機能を1チップで実現しており、ナビゲーションはもちろん、マルチメディア用途や情報通信用途にも対応可能な、多彩でリアルな3Dグラフィックス表示、操作性向上 が図れるGUI表示、画像認識処理機能による白線検知や先行車追跡などが可能となります。
高性能32ビットCPUコアSH-4Aを2個搭載し533MHz動作時に最大1920MIPS(960MIPS×2)の高性能処理を低消費電力で実現します。デュアルコアとして異なるOSをそれぞれのCPUコアに置き、各CPUコアは、全く異なるプログラムを実行するAMP(非対称型マルチプロセッシング)に対応しているため、CPU1ではナビゲーション処理を、CPU2では高速TCP/IP処理を1チップで独立して行うことが可能です。
加えて、両OSが連携する仕組み「ドメイン連携」はもちろん、分離する仕組み「ドメイン分離」(1つのCPUが使用す るメモリ領域に、もう一方のCPUがアクセスしてデータを変更することがないよう干渉を抑制する仕組み)をチップに搭載しています。このため、通常ソフトウェアで行う処理に加え、ハードウェア(SH7776チップ)での処理が可能となり、デュアルコア搭載システムの高信頼性実現をサポートできます。
■ ユビキタス社の UbiquitousTCP/IP について
ユビキタス社の基幹製品であるUbiquitousTCP/IPは「小さく」「軽く」そして「速い」という特長を持っており、通信向けに最適化されたカーネルと併せて提供されます。最小構成時にはわずか10Kバイト程度と小さなコードサイズを実現しています。また組込み向けCPUにおいて一般的なTCP/IPスタックと比べて高速のスループットを実現します。
UbiquitousTCP/IPはすでに1億5千万本以上の累積出荷実績があり、IPv6とのデュアルスタックでの提供も可能です。