5G時代に対応する高速移動体無線網接続OS・ミドルウェアソリューション
目次
1. HE-USB/H 移動体無線モデム USB接続SDKパッケージ
2. 5G時代への持続性
3. 製品構成
4. サポートモデムボードおよびCPUボード一覧
5. 主な特長
6. ユーザメリット
7. 主な用途
8. 移植・チューニング
9. 技術サポート体制
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1. HE-USB/H 移動体無線モデム USB接続SDKパッケージ
これまで3G移動体無線網に接続する場合は、3GモデムをUARTで接続し、ATコマンドでダイアルアップ、PPPプロトコルで動的にIPアドレスを割り当てて、インターネット通信をするモデルが一般的でした。
従来の3G移動体無線網接続イメージ
PPPでのダイアルアップ接続は必要な時にキャリア網に接続し、通信が不要となった場合に切断する運用モデルです。最近では低速なUART(RS232C)接続ではなく、高速なUSB-IF※1のUARTエミュレーション(CDC-ACM※2)でインタフェースするモジュールが多く見かけられます。
※1 USB-IF:USBインプリメンターズフォーラム。USB仕様の標準化、利用促進、互換性保証を目的として創設された非営利団体。
※2 CDC-ACM:通信デバイスクラス(CDC)の仮想シリアル通信(ACM)サブクラス。USB-IFで標準化されたRS232Cによるシリアル通信をエミュレーションするUSBクラス。
しかし、USB-IFのUARTエミュレーション(CDC-ACM)による接続は、低速なUARTを前提に策定されたPoint-to-Point Protocolのため、高速な通信にはオーバヘッドが大きいことが懸念されます。
LTE(Long Term Evolution)は、3.9Gから4Gへと成長する過程で、高速なネィティブ接続であるIPoE(IP over Ethernet)が採用されました。IPoEでは、網側ネットワークがIP網で構成され、ダイアルアップ不要の常時接続(Always ON)を通常形態としています。
LTE移動体無線網接続イメージ
LTEモデムのインタフェースの多くは、高速なUSB2.0 HighSpeedを採用しています。また、USBによる効率的なIPoEのソリューションとして、USB-IFが策定したEthernetフレームをUSBパケットとして伝達するEthernet over USB仕様CDC-ECM※3、CDC-EEM※4、Microsoft社RNDIS※5を採用することで、高速な無線通信を活用可能な実装になっています。
『HE-USB/H 移動体無線モデム USB接続SDKパッケージ』では、従来の接続方法であるCDC-ACMでインタフェースする無線モジュールのPPPによるダイアルアップや、Ethernet over USB仕様でインタフェースする無線モジュールのIPoEによる常時接続をサポートしていますが、5G時代ではより高速な接続方法が求められています。
※3 CDC-ECM:通信デバイスクラス(CDC)のイーサネットコントロールモデル(ECM)サブクラス。USB-IFで標準化されたEthernetをエミュレーションするUSBクラス。
※4 CDC-EEM:通信デバイスクラス(CDC)のイーサネットエミュレーションモデル(EEM)サブクラス。ECMと同じEthernetをエミュレーションするUSBクラス。ECMの非効率なUSB伝送オーバヘッドを改良している。
※5 RNDIS:リモートNDIS。Microsoft社のネットワークドライバモデル(NDIS)をUSBに拡張した。Microsoft社が独自に仕様策定したプロプライエタリプロトコルRNDISを採用している。
2. 5G時代への持続性
次世代5G通信では、無線通信速度が飛躍的に向上しました。高速大容量通信・低遅延な特性は、無線による途切れのない高解像度の動画通信、音声通信を可能にします。また、5Gの多接続性は、すべてのデジタルデバイスをインターネット空間に物(Thing)と仮想化するIoT社会の実現を加速化すると言われています。
無線世代 | 下り(bps) | 上り(bps) |
---|---|---|
3G(High Speed) | 14M | 5.7M |
LTE | 150M | 50M |
5G | 20G(理論値) | 10G(理論値) |
5Gの高速大容量通信の恩恵を享受できるよう、次世代5G通信モデムのUSBインタフェースは、USB-IFのCDC-NCMを標準とします。EthernetのMTUサイズ(フレームあたりの最大転送バイト数)が1500バイト単位に制限されることに対し、5G通信は、1フレーム当たり8Kバイト~64KバイトのJumbo Frameを扱うことが可能です。CDC-NCMは、Jumbo FrameのEthernetフレームをUSB伝送として扱うことが可能なクラス仕様です。
5G移動体無線網接続イメージ
次世代5G通信ではCDC-NCMを使うことによりUSBによる高速通信のボトルネックを解消することができます。『HE-USB/H 移動体無線モデム USB接続SDKパッケージ』は5G時代のEthernet over USBを包括的にサポートします。
3. 製品構成
種類 | 製品構成 |
---|---|
ダイアルアップ接続ソリューションSDK | TCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』 PPPプロトコルスタック『HE-PPP』 USBホストスタック『HE-USB/H』 USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』 |
常時接続ソリューション(ECM)SDK | TCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』 USBホストスタック『HE-USB/H』 USB CDC-ECMクラスドライバ 『HE-ECM/H』 USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』 |
常時接続ソリューション(EEM)SDK | TCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』 USBホストスタック『HE-USB/H』 USB CDC-EEMクラスドライバ 『HE-EEM/H』 USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』 |
常時接続ソリューション(RNDIS)SDK | TCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』 USBホストスタック『HE-USB/H』 USB RNDISクラスドライバ 『HE-RNDIS/H』 USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』 |
常時接続ソリューション(NCM)SDK | TCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』 USBホストスタック『HE-USB/H』 USB CDC-NCMクラスドライバ 『HE-NCM/H』 USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』 |
移動体無線ソリューション構成図
緑:基本構成パッケージ
白:オプションパッケージ(別売)
関連製品
- 組込み向けUSBホストプロトコルスタック HE-USB/H
- MISRA準拠TCP/IP IPv4/v6 HE-NETv4、HE-NETv6、HE-NETv4/v6
- MISRA準拠HE-NET シリーズ向けアプリケーションパッケージ
- MISRA準拠HE-NET シリーズ向けセキュリティソフトウェア
4. サポートモデムボードおよびCPUボード一覧
LTE モデム ボード | モデム モジュール | ホスト CPU ボード | RTOS | 種類 | 接続形態 | USB I/F | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
EB-SL01L※6 | HL7539※7 | STM32F746G-DISCO※10 SBEV-RZ/T1※11 SBEV-RZ/A2M※12 | Free | LTE | ダイアルアップ | CDC-ACM | IP over PPP |
常時接続 | CDC-NCM | IPoE 網制御にCDC-ACMを使用 | |||||
EVK-L24※8 | TOBY-L220※9 | ダイアルアップ | CDC-ACM | IP over PPP | |||
常時接続 | CDC-ECM | IPoE 網制御にCDC-ACMを使用 ルータモード、ブリッジモードをサポート | |||||
RNDIS |
※6 EB-SL01L:株式会社ラインアイ製 LTE 無線モジュール組込み評価ボード。
※7 HL7539:Sierra Wireless 社製 LTE 無線モジュール。技適、NTTドコモの相互接続性試験合格
※8 EVK-L24:u-blox 社製 LTE 無線モジュール組込み評価ボード。
※9 TOBY-L220:u-blox 社製 LTE 無線モジュール。技適、NTTドコモの相互接続性試験合格。
※10 STM32F746G-DISCO:STマイクロエレクトロニクス社製 STM32F7(Arm Cortex-M7)を搭載した CPU ボード。
※11 SBEV-RZ/T1:シマフジ電機社製 CPU ボード。ルネサス エレクトロニクス社製RZ/T1(Arm Cortex-R4)を搭載。
※12 SBEV-RZ/A2M:シマフジ電機社製 CPU ボード。ルネサス エレクトロニクス社製RZ/A2M(Arm Cortex-A9)を搭載。
関連製品
ハードウェア接続イメージ
開発環境
統合開発環境 | SBEV-RZ/T1, SBEV-RZ/A2M :Renesas Electronics e2studio(無償) STM32F746G-DISCO:Atollic TrueSTUDIO for STM32(無償) |
---|---|
コンパイラ | GCC |
JTAGエミュレータ | SBEV-RZ/T1 ,SBEV-RZ/A2M :別途J-Link Liteの購入が必要 STM32F746G-DISCO:オンボードJTAGエミュレータを使用 |
5. 主な特長
- 100% Cソースコード提供
- 少ないROM/RAMフットプリント実装、ワンチップマイクロコントローラ向けソリューションに最適
- グローバル市場において豊富な実績
- 移植が容易なモジュール構造
- 他のアプリケーションの実行を妨げない低MIPS
6. ユーザメリット
- OS、TCP/IP、USBなど基本要素は揃っているBSP(ボードサポートパッケージ)のため、プロジェクトのジャンプスタート、アプリケーションの開発に注力可能
7. 主な用途
- 屋外監視カメラ
- 自動販売機
- 屋外センサーデータ収集
- ハンディターミナル
- 車両運用システム
8. 移植・チューニング
他のRTOS環境、他の製品ボード・カスタムボード、他の無線モジュールの移植請負開発も随時対応可能です。
9. 技術サポート体制
専任の担当者による、電子メールによる技術サポートを提供します。
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