5G時代に対応する高速移動体無線網接続OS・ミドルウェアソリューション

より詳しく技術や関連製品について知りたい方へ

お気軽相談

本コラムに関係する技術や関連する製品について知りたい方は、お気軽にご相談ください。

1. HE-USB/H 移動体無線モデム USB接続SDKパッケージ

これまで3G移動体無線網に接続する場合は、3GモデムをUARTで接続し、ATコマンドでダイアルアップ、PPPプロトコルで動的にIPアドレスを割り当てて、インターネット通信をするモデルが一般的でした。

従来の3G移動体無線網接続イメージ
従来の3G移動体無線網接続イメージ

PPPでのダイアルアップ接続は必要な時にキャリア網に接続し、通信が不要となった場合に切断する運用モデルです。最近では低速なUART(RS232C)接続ではなく、高速なUSB-IF※1のUARTエミュレーション(CDC-ACM※2)でインタフェースするモジュールが多く見かけられます。

※1 USB-IF:USBインプリメンターズフォーラム。USB仕様の標準化、利用促進、互換性保証を目的として創設された非営利団体。
※2 CDC-ACM:通信デバイスクラス(CDC)の仮想シリアル通信(ACM)サブクラス。USB-IFで標準化されたRS232Cによるシリアル通信をエミュレーションするUSBクラス。

しかし、USB-IFのUARTエミュレーション(CDC-ACM)による接続は、低速なUARTを前提に策定されたPoint-to-Point Protocolのため、高速な通信にはオーバヘッドが大きいことが懸念されます。
LTE(Long Term Evolution)は、3.9Gから4Gへと成長する過程で、高速なネィティブ接続であるIPoE(IP over Ethernet)が採用されました。IPoEでは、網側ネットワークがIP網で構成され、ダイアルアップ不要の常時接続(Always ON)を通常形態としています。

LTE移動体無線網接続イメージ
LTE移動体無線網接続イメージ

LTEモデムのインタフェースの多くは、高速なUSB2.0 HighSpeedを採用しています。また、USBによる効率的なIPoEのソリューションとして、USB-IFが策定したEthernetフレームをUSBパケットとして伝達するEthernet over USB仕様CDC-ECM※3、CDC-EEM※4、Microsoft社RNDIS※5を採用することで、高速な無線通信を活用可能な実装になっています。

『HE-USB/H 移動体無線モデム USB接続SDKパッケージ』では、従来の接続方法であるCDC-ACMでインタフェースする無線モジュールのPPPによるダイアルアップや、Ethernet over USB仕様でインタフェースする無線モジュールのIPoEによる常時接続をサポートしていますが、5G時代ではより高速な接続方法が求められています。

※3 CDC-ECM:通信デバイスクラス(CDC)のイーサネットコントロールモデル(ECM)サブクラス。USB-IFで標準化されたEthernetをエミュレーションするUSBクラス。
※4 CDC-EEM:通信デバイスクラス(CDC)のイーサネットエミュレーションモデル(EEM)サブクラス。ECMと同じEthernetをエミュレーションするUSBクラス。ECMの非効率なUSB伝送オーバヘッドを改良している。
※5 RNDIS:リモートNDIS。Microsoft社のネットワークドライバモデル(NDIS)をUSBに拡張した。Microsoft社が独自に仕様策定したプロプライエタリプロトコルRNDISを採用している。

2. 5G時代への持続性

次世代5G通信では、無線通信速度が飛躍的に向上しました。高速大容量通信・低遅延な特性は、無線による途切れのない高解像度の動画通信、音声通信を可能にします。また、5Gの多接続性は、すべてのデジタルデバイスをインターネット空間に物(Thing)と仮想化するIoT社会の実現を加速化すると言われています。

無線世代 下り(bps)上り(bps)
3G(High Speed) 14M5.7M
LTE150M50M
5G20G(理論値) 10G(理論値)

5Gの高速大容量通信の恩恵を享受できるよう、次世代5G通信モデムのUSBインタフェースは、USB-IFのCDC-NCMを標準とします。EthernetのMTUサイズ(フレームあたりの最大転送バイト数)が1500バイト単位に制限されることに対し、5G通信は、1フレーム当たり8Kバイト~64KバイトのJumbo Frameを扱うことが可能です。CDC-NCMは、Jumbo FrameのEthernetフレームをUSB伝送として扱うことが可能なクラス仕様です。

5G移動体無線網接続イメージ
5G移動体無線網接続イメージ

次世代5G通信ではCDC-NCMを使うことによりUSBによる高速通信のボトルネックを解消することができます。『HE-USB/H 移動体無線モデム USB接続SDKパッケージ』は5G時代のEthernet over USBを包括的にサポートします。

3. 製品構成

種類製品構成
ダイアルアップ接続ソリューションSDKTCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』
PPPプロトコルスタック『HE-PPP』
USBホストスタック『HE-USB/H』
USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』
常時接続ソリューション(ECM)SDKTCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』
USBホストスタック『HE-USB/H』
USB CDC-ECMクラスドライバ 『HE-ECM/H』
USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』
常時接続ソリューション(EEM)SDKTCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』
USBホストスタック『HE-USB/H』
USB CDC-EEMクラスドライバ 『HE-EEM/H』
USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』
常時接続ソリューション(RNDIS)SDKTCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』
USBホストスタック『HE-USB/H』
USB RNDISクラスドライバ 『HE-RNDIS/H』
USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』
常時接続ソリューション(NCM)SDKTCP/IPプロトコルスタック『HE-NETv4』
USBホストスタック『HE-USB/H』
USB CDC-NCMクラスドライバ 『HE-NCM/H』
USB CDC-ACMクラスドライバ 『HE-ACM/H』

移動体無線ソリューション構成図
移動体無線ソリューション構成図

緑:基本構成パッケージ
白:オプションパッケージ(別売)

関連製品

4. サポートモデムボードおよびCPUボード一覧

LTE
モデム
ボード
モデム
モジュール
ホスト
CPU
ボード
RTOS種類接続形態USB I/F 備考
EB-SL01L※6HL7539※7STM32F746G-DISCO※10
SBEV-RZ/T1※11
SBEV-RZ/A2M※12
FreeRTOSLTEダイアルアップCDC-ACMIP over PPP
常時接続CDC-NCMIPoE
網制御にCDC-ACMを使用
EVK-L24※8TOBY-L220※9ダイアルアップCDC-ACMIP over PPP
常時接続CDC-ECMIPoE
網制御にCDC-ACMを使用
ルータモード、ブリッジモードをサポート
RNDIS

※6 EB-SL01L:株式会社ラインアイ製 LTE 無線モジュール組込み評価ボード。
※7 HL7539:Sierra Wireless 社製 LTE 無線モジュール。技適、NTTドコモの相互接続性試験合格
※8 EVK-L24:u-blox 社製 LTE 無線モジュール組込み評価ボード。
※9 TOBY-L220:u-blox 社製 LTE 無線モジュール。技適、NTTドコモの相互接続性試験合格。
※10 STM32F746G-DISCO:STマイクロエレクトロニクス社製 STM32F7(Arm Cortex-M7)を搭載した CPU ボード。
※11 SBEV-RZ/T1:シマフジ電機社製 CPU ボード。ルネサス エレクトロニクス社製RZ/T1(Arm Cortex-R4)を搭載。
※12 SBEV-RZ/A2M:シマフジ電機社製 CPU ボード。ルネサス エレクトロニクス社製RZ/A2M(Arm Cortex-A9)を搭載。

関連製品

ハードウェア接続イメージ

ハードウェア接続イメージ

開発環境

統合開発環境SBEV-RZ/T1, SBEV-RZ/A2M :Renesas Electronics e2studio(無償)
STM32F746G-DISCO:Atollic TrueSTUDIO for STM32(無償)
コンパイラGCC
JTAGエミュレータ SBEV-RZ/T1 ,SBEV-RZ/A2M :別途J-Link Liteの購入が必要 
STM32F746G-DISCO:オンボードJTAGエミュレータを使用

5. 主な特長

  • 100% Cソースコード提供
  • 少ないROM/RAMフットプリント実装、ワンチップマイクロコントローラ向けソリューションに最適
  • グローバル市場において豊富な実績
  • 移植が容易なモジュール構造
  • 他のアプリケーションの実行を妨げない低MIPS

6. ユーザメリット

  • OS、TCP/IP、USBなど基本要素は揃っているBSP(ボードサポートパッケージ)のため、プロジェクトのジャンプスタート、アプリケーションの開発に注力可能

7. 主な用途

  • 屋外監視カメラ
  • 自動販売機
  • 屋外センサーデータ収集
  • ハンディターミナル
  • 車両運用システム

8. 移植・チューニング

他のRTOS環境、他の製品ボード・カスタムボード、他の無線モジュールの移植請負開発も随時対応可能です。

9. 技術サポート体制

専任の担当者による、電子メールによる技術サポートを提供します。

より詳しく技術や関連製品について知りたい方へ

お気軽相談

本コラムに関係する技術や関連する製品について知りたい方は、お気軽にご相談ください。


製品情報

組込み向けUSBホストプロトコルスタック

HE-USB/H

豊富な対応実績。USB 1.1/2.0に準拠し、ROM/RAMの低フットプリントを実現
製品ページを見る

組込み機器向けUSB IC-CARDアクセスコントロール ソリューション (HE-PCSC、HE-CCID)

USB

2021.09.28

コラムを読む

USBデバイスの活用

USB

2021.08.27

コラムを読む

組込みにおいてUSBホストコントローラーを選択する際の注意点

USB

2018.12.14

コラムを読む